ペットとは一生一緒に! どうしても飼えなくなったらやるべきこと

犬や猫に限らず、最近はさまざまな動物がペットとして飼われています。サル、キツネ、フクロウなど珍しい種類も飼育されるようになり、SNSや動画サイトで見かける人も多いでしょう。
それと同時に注目されつつある問題に「ペットの野生化」があります。飼育できなくなったペットを無責任に野に放つことによって起きる問題です。

この記事では、ペットの野生化が引き起こす自然界への問題、どうしても飼育できない事情ができたときの対応法などについて詳しく解説します。

ペットの野生化とは?

ペットの野生化とは、ペットが何らかの事情で飼育されなくなり、もともと生息地ではない環境に住み着いてしまうことです。野生化のほか、移入とも言われます。
野生化したペットはさまざまな問題を引き起こす可能性があり、実際に問題が顕在化している事象も確認されています。

場合によっては地域の生態系をおびやかす危険があることも事実です。特にそのような危険が高い動物は「侵略的外来種」と呼ばれます。
侵略的外来種は飼育放棄されたペットに限りませんが、なかにはアメリカザリガニやアライグマのように、もともとペットとして飼育されていた種も混ざっています。

野生化する原因1:海外からの流入

ほかの環境で生息していた動物が野生化する原因は、大きく分けて2つあります。
ひとつは本来の生息地以外(海外や国内のほかの地域)から届く貨物や移動してくる人に付着していたり、混入していたりなど、意図的ではない流入があることです。
この場合はペットの野生化ではなく、他地域から人の生活の流れによって移動してきたといえるでしょう。動物に限らず、貨物を運ぶ船舶に付着した海藻が移動してくることもあります。
しかし生態系に影響を及ぼす可能性は否定できないため、近年では大きな問題としてとらえられていることも事実です。

野生化する原因2:ペットの脱走や飼い主の飼育放棄

ペットや家畜が逃げ出したり、飼い主が飼育放棄をしたりするなどの事情で野生化することもあります。飼育できない環境や事情になったからといって放棄するのは非常に無責任ですが、残念ながらそのような飼い主がいることも事実です。
野生化したペットのなかには、住み着いたエリアで繁殖を繰り返し、本来そのエリアで営まれていた生態系を大きく変化させてしまうものもあります。
それだけではなく、そのエリアで暮らす従来の生物を捕食し、固有種の存続をおびやかしてしまうことも否定できません。
例えばペットのエサとして輸入されていたトカゲのグリーンアノールは、逃げ出したり捨てられることによって日本で繁殖し、固有種である蝶のオガサワラシジミを絶滅させた可能性が高いと言われています。

ペットが野生化することで生まれる問題

ペットが野生化することによって生まれる問題は多く、人間にとっても動物にとっても被害が出るケースは少なくありません。人間社会への被害や生態系の変化、動物自身の安全など、いくつもの問題をはらんでいます。

人間社会に害を及ぼすことがある

野生化したペットの生きるための行動が、人間社会に被害を与えることがあります。その結果、ペットとして飼育することができなくなり、害獣認定されてしまうケースも生まれているのです。
顕著な例としては北米のアライグマです。かつて日本ではアライグマをペットとして飼うブームが起こりました。
幼少時のアライグマは人間になつき、かわいらしさも相まって大人気でしたが、成獣になると気性が荒くなるため飼育放棄をする飼い主が増え、野生化と繁殖が進みます。
その結果、農作物や家屋に被害が出るようになり、いまでは害獣として駆除が進められることになってしまいました。学術研究や展示目的以外での飼育も禁じられ、ペットとして飼うことはできなくなっています。

生態系を変化させてしまう

捕食や繁殖の規模が大きく、生態系、自然環境に重大な影響を与えることもあります。このような種は侵略的外来生物や特定外来生物のカテゴリーに分類され、駆除対象になるケースが少なくありません。
たとえば沖縄ではハブの駆除を目的に、アフリカやインドなどに生息するマングースを迎え入れ、地域に放ちました。
しかし、繁殖したマングースは人々の期待に反してハブ退治には効果がなく、それどころか固有種のヤンバルクイナやアマミノクロウサギなど、貴重な動物を捕食するようになったのです。
結果として特定外来生物に指定され、駆除が進められるようになりました。
マングース自身には何の問題もないはずが、人々の都合と野生化によって害獣扱いされるようになってしまっています。
飼育するべき人間の責任放棄や無計画な受け入れは、何の罪もない動物を苦しめ、人間社会にも影響を及ぼす可能性があることを知っておかなければいけない例だといえるでしょう。

動物によっては生きていけないこともある

いままでペットとして飼育されてきた動物が野に放たれた場合、自分の力では生きていけないこともあります。
人間の家という安全な環境で食事をもらって快適に生きてきたペットが、外の世界で突然暮らすことになったらどうなるでしょうか。
狩りの方法や外敵から身を守る方法も知らない元ペットは、野生化したといっても生き方が分からず、場合によっては最悪の事態になってしまうことも考えられます。
人間の都合で飼育を放棄する行為は動物愛護観点からも誤ったものであり、絶対に避けるべきでしょう。

どうしても飼い続けられない時にできること

飼い始めは一生面倒を見るつもりだった人も、やむを得ない事情でペットを手放さなければならないことがあるかもしれません。
そんなときには野生化させるのではなく、できる限りの対応をしてみてください。

どんな事情があっても捨てない

「捨てない」ということは必ず意識しておきましょう。
日本には「動物の愛護及び管理に関する法律」があります。この法律では愛護動物(ペット)の飼育放棄を禁じており、違反した場合には100万円以下の罰金を支払う必要が生じるとされています。
法律面、金銭面でもペットの遺棄は飼い主にとって大きな問題をまねきます。
「どうしても飼えなくなった」という事情があっても決して捨てず、次項の動物愛護センターや行政の窓口に相談してください。

動物愛護センターや行政に相談

各自治体の窓口や動物愛護センターでは、飼えなくなったペットの面倒を見たり、次の飼い主を探すサポートをしたりするシステムが整えられています。
引っ越しや飼い主の高齢化などさまざまな事情に対応しやすいため、必要であれば相談を検討しましょう。

基本は「終生飼育」を意識して

ペットは寿命まで飼育する「終生飼育」が求められています。飼う前に「自分がペットの寿命を見届けてあげられるか」ということをよく考えましょう。
「飼う前から」考えておくことも、ペットの野生化を防ぐための重要な対策になります。

一度迎え入れたら最後まで! ペットの野生化は重大問題

ペットの野生化は日本だけではなく、世界でも問題視されています。従来の生態系をおびやかしたり、人間社会に被害を与えてしまったりなどの影響があり、ときには害獣として駆除対象になってしまうこともあるほどです。
ペットは人間に幸せを与えてくれる大切な存在であり、野生化してうとましがられるために生まれたわけではありません。一度生活に迎え入れたら最後まで愛情を持って飼育しましょう。

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