
動物が好きで、「動物に関わる仕事がしたい」と考えている人のあいだで最近注目を集めているのが「愛玩動物看護師」という国家資格です。
ペットを家族の一員として大切にする人が増えた今、動物医療の現場でも専門的なサポートを担う人材が必要とされています。
今回は、愛玩動物看護師の仕事内容から国家試験、就職先や働き方について解説します。
愛玩動物看護師とは、動物の健康を支える医療チームの一員として、獣医師の指示のもとで動物の診療補助や飼い主へのサポートを行う専門職です。
2022年5月に国家資格として施行され、2023年に第1回国家試験が実施されました。この試験に合格して登録を済ませた人だけが「愛玩動物看護師」と名乗れます。
ペットも人間と同じように病気を患い、治療やケアを必要とする存在ですが、獣医師だけで全ての対応をするのは限界があります。
そこで、動物にやさしい医療を届ける存在として、愛玩動物看護師が重宝されているのです。
愛玩動物看護師のメイン業務は、動物病院における「診療補助」です。
これは器具を渡すような単純なサポートではなく、注射や採血の介助、レントゲン撮影時の保定、手術中の衛生管理など、医療行為の周辺を安全に支える重要な仕事です。
例えば、獣医師が正確な処置を行うためには看護師の補助が欠かせず、動物が動かないように優しくしつつもしっかりと保定し、手術器具の準備や滅菌を迅速に行うなど、医療現場での的確な動きが求められます。
治療中や術後の動物たちに寄り添い、食事管理や排泄の確認、体温や脈拍の測定、服薬の補助といった日常的なケアも行います。
動物は不安や痛みを言葉にできないため、体調のちょっとした変化に気づく観察力も求められます。
入院動物が少しでも快適に過ごせるように、タオルの交換や体を拭いてあげたり、ストレスが溜まらないように話しかけたりと、細やかな気遣いや心のケアも仕事の一部です。
医療現場では、動物だけでなく飼い主への対応も大切です。
診療後に処方された薬の使い方を説明したり、自宅でのケア方法を案内したりといった、コミュニケーションスキルも欠かせません。
中には悲しみで涙を流している飼い主と向き合う場面もあるため、その際に丁寧に寄り添いながら不安をやわらげる対応ができる人は、現場でもとても信頼されます。
動物と人、両方にやさしい視点を持てる人がこの職業に向いているといえるでしょう。
小規模な動物病院では、受付業務や会計、カルテ入力なども愛玩動物看護師が兼任する場合があり、医療サポートではなく、院内全体の運営を支える縁の下の力持ちとして、多くの役割を担うことになります。
その場合、パソコン操作や接客スキルも必要になりますが、これらも「病院の顔」としての大事な仕事で、飼い主が安心できるように配慮しながら、受付対応を行う姿も印象に残りやすいポジションです。
愛玩動物看護師の国家試験は誰でも受けられるわけではありません。
受験資格を得るには、国から指定を受けた「愛玩動物看護師養成所(専門学校、大学)」に通う必要があります。(ただし2025年時点では経過措置期間が設けられており、条件を満たせば既卒者や実務経験者でも受験が可能)
そこで解剖学や疾病学、動物行動学、看護技術、感染症対策、麻酔学などの本格的なカリキュラムを学びます。
動物の命を扱う資格だからこそ、専門的な知識と技術の修得が求められるのです。
試験は2025年時点では年1回の実施で、合格して初めて「愛玩動物看護師」として登録ができます。
過去問はまだ少ないものの、養成所では模擬試験や演習などで対策が組まれているので、日頃から授業にしっかり取り組むことが大切です。
第3回愛玩動物看護師国家試験は5,736名が受験し、合格率は「88%」でした。(参照元:一般社団法人動物看護師統一認定機構)
出題範囲が広いため、試験直前になってから焦って対策を始めても全てを網羅するのは難しく、1年次、2年次からコツコツと学びを積み重ねていく人が本番で落ち着いて実力を発揮しています。
また、実務に直結する分野も多いため、現場実習で見聞きした経験が知識の定着に役立ちます。
机上の勉強と現場経験をバランスよく活用することが合格のポイントです。
学校のカリキュラムには、基本的に提携している動物病院などで実際に現場に立ち、動物や飼い主と接する経験を積む「臨床実習」が含まれています。授業で学んだことを実地で確認する大切な機会です。
動物と関わる仕事は慣れも大事なので、早いうちから経験を重ねるのがおすすめです。
愛玩動物看護師の就職先として最も多いのが、動物病院です。
獣医師とチームを組み、診療の補助や入院動物のケア、飼い主への説明など幅広い役割を担います。
病院によっては予防医療に力を入れているところや、ペットドックを導入しているところもあり、携われる仕事は現場の方針次第で多岐にわたるものです。
勤務形態は正社員が多いですが、近年ではパート、アルバイトの募集も増えており、ライフスタイルに合わせて働き方を選べる病院も出てきています。
また、夜間救急専門の病院や、地域密着型のクリニックなど、職場の選び方次第で業務内容も変化します。
病院以外にも、ペットホテルやトリミングサロンで働く愛玩動物看護師も増えてきました。
動物に関する知識がある人材は、飼い主にとっても安心感があり、サービスの質を高める存在として重宝されます。
特に高齢の動物や、持病を抱えた動物を預かる施設では、急変時の初期対応や健康チェックができる人材が求められ、単に「ペットを預かる場所」ではなく、命を扱う現場であるという意識が強く求められます。
動物用医薬品のメーカーやペットフード会社、動物保険会社など、一般企業への就職も一部で広がっています。
例えば、製品開発のサポート、営業やマーケティング部門での獣医師との橋渡し、学会運営や資料作成などが主な業務です。
動物に詳しい人材が社内にいるだけで、企業は安心して商品を展開でき、現場経験がある愛玩動物看護師は企業側にとても貴重な存在となっています。
今後も求人の幅は少しずつ広がっていくと考えられます。
動物愛護センターや保健所、動物関連の専門学校で働くという道もあります。
行政機関では、動物の適正飼育や地域の動物福祉に関する取り組みなどに関わる業務を行いますが、知識だけでなく対話力や提案力も求められる現場です。
また、養成所で講師や実習指導員として教える立場になる選択肢もあり、現場経験を教育に活かし、未来の愛玩動物看護師を育てる側に回るというキャリアも、やりがいのある道となっています。
ペットを取り巻く環境が変化している今、動物医療の現場では「知識と技術をしっかり学んだ人材」が求められています。
これから愛玩動物看護師を目指すなら、現場で通用する実践的なスキルが短期間で身につきやすく、就職にも直結しやすい専門学校への進学がおすすめです。
特に動物病院との提携実習が充実していたり、国家試験対策に特化したカリキュラムを組んでいたりと、専門学校ならではのサポート体制が整っており、講師も現役の獣医師や看護師が多く、リアルな現場目線で学べるのも大きな魅力です。
将来、現場で活躍できる動物看護師を目指すならば、まずは資格取得を目標に効率よく学び、しっかりと知識や技術を身につけましょう。