
動物に関わる仕事の中で、近年注目されているのが「動物介護士」です。
高齢になった犬や猫、持病を抱えるペットの日常ケアから心のケアまでサポートする専門職で、飼い主では対応が難しい場面を安心して任せられる存在でもあります。
今回は、動物介護士の役割や実際の仕事の流れ、資格の有無や目指し方について解説します。
動物介護士の役割は大きく分けて二つあります。
ひとつは実際にペットの介護を担当する仕事で、もうひとつは介護に悩む飼い主へ助言やサポートをする仕事です。
ペットの介護では、排泄や食事の補助、散歩や遊びといった運動サポート、軽いマッサージやリハビリの補助、爪切りやブラッシングなどのグルーミングまで幅広く対応します。
支援する動物の種類や体調によって必要なケアが大きく変わるのが特徴です。
例えば、自力で動ける犬や猫であれば、日常的な介助は少なく済む場合がありますが、反対に寝たきりのペットの場合は、体勢を変える、褥瘡(床ずれ)を防ぐ、こまめに状態を観察するなど、細かな配慮が求められます。
飼い主へのサポートを行う場面では、まず困っている点や不安を丁寧にヒアリングし、負担を減らせる具体的な方法を一緒に考えていきます。
介護の技術だけでなく、心情面で寄り添う姿勢も重要で、ペットと飼い主の両方を支える存在として期待されている職業です。
動物介護士として働くために法律で定められた資格はありません。
しかし、実際の現場では病気や高齢により体力や感覚が落ちた動物と向き合う場面が多く、資格取得を通して体系的に学ぶことをおすすめします。
民間資格は複数存在し、以下に実際に現場で役立つ代表的な資格をご紹介します。
一般財団法人「日本能力開発推進協会(JADP)」が認定する資格で、シニア世代のペットに必要な介護の基礎知識や代表的な疾患への理解を重点的に学べます。
取得方法はシンプルで、協会が指定する教育機関のカリキュラムを修了した後、在宅受験の認定試験に挑戦します。
合格ラインは70%以上となっており、初学者でも取り組みやすい内容です。
群馬県にある「世界の名犬牧場」と「株式会社学文社」が共同で主催する資格です。
高齢期の犬や猫が快適に過ごすための健康管理やストレスケア、しつけ、グルーミングの知識など、日常生活に直結するケア技術を幅広く扱い、動物関係の仕事が未経験でも挑戦しやすい点が魅力です。
講座受講後に最終課題へ取り組み、それが試験を兼ねる形で認定に繋がります。
「日本インストラクター技術協会(JIA)」が認定する資格で、犬や猫の介護方法に加え、加齢による視覚や聴覚の低下への対応、食事管理、生活環境の整え方など、実践的なケアを学べます。
資格取得は二つの方法があり、在宅試験に挑戦するルートと、通信講座を修了して最終課題に合格するルートです。
後者は通信講座の終了が条件なので、基礎から体系的に学びたい人に向いています。
すでに動物介護の経験がある人は、在宅試験ルートで短期間取得も狙えるため、現場での肩書きとして活かしやすい資格です。
一般社団法人「日本キャリア教育技能検定協会(JCSA)」が認定する資格で、犬の老化サインを見抜き、生活の質を維持するためのケア方法を体系的に学べます。
協会が定める養成講座を修了し、認定課題で一定の基準を満たすことで資格取得となります。
さらに、希望者は実技スクーリングを受けて、老犬介護士A級・B級・C級のインストラクターライセンスを取得する道もあり、指導や教育に携わりたい人に向いた資格です。
獣医師や看護助手のサポートに入り、入院中の犬や猫のケアを行い、排泄介助や食事補助、体調の観察などが主な業務です。
また、治療後の回復期を過ごすペットへの心身ケアも担当します。
医療現場で働くため、基礎疾患や投薬スケジュールを理解している人ほど任される範囲が広がります。
飼い主の自宅を訪問し、食事や排泄、散歩、見守りなど日常生活のサポートをします。
特にシニア期の犬猫は体力の低下や疾患に合わせた配慮が必要なため、介護の知識や資格を持つ人は安心して任せてもらいやすく、信頼関係を築きやすいのが特徴です。
介護そのものに加え、室温や段差、寝床の位置といった環境調整、ストレスを与えない接し方など、飼い主の生活に合わせた柔軟な対応力が求められます。
老犬や老猫、慢性疾患を抱えるペットの生活支援に特化した施設での仕事で、散歩や排泄補助だけでなく、体位交換、床ずれ予防、体力に応じたリハビリの補助など、長時間にわたって丁寧なケアをします。
施設によっては日中のみの通所型や宿泊型など形態が異なり、現場で介護スキルを磨きたい人や専門性を深めたい人に適した職場です。
飼い主の旅行や出張時にペットを預かり、食事管理や見守り、生活環境の保持を行う施設で働きます。
施設によっては高齢犬猫や持病のあるペットの受け入れにも対応しており、介護の知識を持つ動物介護士は安心して任せてもらいやすい存在です。
ただし、医療行為は行わないため、健康状態の観察や異変の早期発見、安全な休息スペースの確保など、環境、生活面のケアが中心になります。
保護された犬や猫が安全に生活できる環境を整え、健康管理や食事ケアを行いながら、新しい飼い主との出会いにつなげます。
保護動物は体験不足や人への不信感を抱えている場合も多く、社会化トレーニングや心のケアが重要になります。
観察力や動物への理解、焦らず寄り添う姿勢が評価される現場で、特に動物介護士の経験やコミュニケーション力が活かされやすい領域です。
まず大前提として、動物が好きであることは欠かせません。
介護の仕事は可愛い部分だけではなく、排泄の補助や体調不良の対応、寝たきりのケアなど、飼い主でも心が折れやすい場面が続きます。
好きだからこそ根気強く向き合えますし、飼い主や動物から信頼されやすくなります。
動物は人のように痛みや不調を言葉で伝えられません。
いつもより食べる量が少ない、歩き方がぎこちない、呼吸が浅い、毛のツヤが悪いなど、細かな違和感から体調の変化を読み取ります。
動物介護士には、こうした小さなサインを見落とさない観察力が求められるのです。
早期に気付けるほど適切なケアが可能になり、動物の負担を減らせます。
介護中の動物は不安やストレスを抱えています。
姿勢を変えるスピード、声のかけ方、抱き上げる角度一つで安全性や安心感が変わります。
例えば、足腰が弱った犬に優しく支える位置や、視覚が弱った猫へ配慮した環境づくりなど、細やかな気配りができる人は現場で特に活躍しやすいです。
動物の快適さを優先し、相手に合わせて行動できる柔軟さが強みになります。
動物介護士は獣医師やトリマーと比べるとまだ知名度が高くありませんが、ペットの高齢化が進む現代社会では、必要とされる場面が確実に増えています。
飼い主が仕事や家庭の事情で病気のペットの対応や介護を続けられない場合、ペットシッターや動物介護施設へ依頼することになります。
ただ世話をするだけの人材ではなく、飼い主やペットの心身の変化を理解し、一緒に向き合う専門職としての需要は拡大するでしょう。
動物介護士は、排泄や食事のサポートに限らず、体調観察や不安のケアまで行うため、信頼される存在であることが求められます。
制度上は資格がなくても職には就けますが、実務で困らないためには動物介護の基礎知識や動物生理の理解が欠かせません。
理解不足だとペットに負担を与えてしまったり、飼い主の期待に応えられなかったりする可能性があるため、専門学校や関連講座で学び、実践的なスキルの習得をおすすめします。