知っておきたい! 身近なことからできる動物愛護
動物が好きな人のなかには、動物愛護に関心を寄せる人が少なくありません。ペットを飼っていても飼っていなくても、愛する動物の尊厳を守りたいと考えるでしょう。
動物愛護は人間と動物の関係を深める大切な考え方です。
今回は動物愛護の概要や、身近なことからはじめられる動物愛護活動についてご紹介します。
生物多様性の中で育まれた人間と動物の関係
動物愛護は生物多様性と深く関わっています。40億年もの地球の長い歴史のなか、生命の誕生から現代まで、人間を含めた多くの動物などが進化しながらつながりを持ってきました。それぞれの生物が多様で豊かな個性を持ち、いまの社会を作り上げています。
生物多様性が生み出したつながりのなかでも、人間と動物の関係は深いものです。3万年前にはホラアナグマの飼育が行われ、犬(オオカミ)の家畜化が始まった形跡があるほど、長い時間を身近な関係で過ごしています。
人間は食料や働き手として動物と関わるだけではなく、信頼できるパートナー、ペットとしても動物とともに歴史を積み重ねてきました。それは現代社会でも変わることなく受け継がれています。
人間社会が豊かになり、さまざまな考えが生まれることによって、動物に対する見方も変わってきました。動物愛護はその一環です。「動物の尊厳を守ろう」という考えを持つ人々が増えたのです。
犬や猫、さまざまな動物の生命を尊厳への配慮
残念ながら、動物に対してひどい仕打ちをする人は存在します。しかし彼らとは逆に動物を愛し、動物の生命や尊厳を守り、安心した暮らしをさせてあげたいと思う人も多いのが事実です。
そんな人々が動物愛護精神を持ち、さまざまな活動をしています。ペットを大切にする人、望ましくない環境で過ごす動物を保護する人など、動物を愛する人たちはそれぞれの立場でできることをする時代になりました。
現代のペットへの考え方
一般社団法人ペットフード協会の「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」によると、調査対象2,000世帯のうち、犬を飼っているのは53.0%、猫を飼っているのは40.3%にのぼりました。
ペットを飼う理由として「生活に喜びを与えてくれる」が多く、生活に欠かせない存在として大切にしている背景がうかがえます。
新しくペットとして犬や猫などを迎え入れた人も少なくありません。ここで注目したいのは、ペットを探す方法の第2位が「インターネットの里親募集を見る」であることです。
日本ではペットショップやブリーダーからペットを迎えられます。しかし、あえて里親を求めるペットを選ぶ飼育希望者の意識は、動物愛護につながる行動ではないでしょうか。里親募集が広く知られるようになった現代ならではの考え方かもしれませんね。
もちろん、ペットショップやブリーダーを通して迎え入れることにも問題はありません。むしろそのような橋渡しをするプロの人々こそが動物愛護に詳しく、また、熱心でしょう。ペットの尊厳と生命を守りながら、新しい飼い主に出会うまで大切に保護する人々がほとんどです。
日本で注目される動物愛護
動物愛護の精神は法律にも影響をおよぼしています。日本では2000年に環境省の主導で「動物愛護管理法」が施行されました。動物愛護管理法では以下の理念と目的が明示されています。
・生命への感謝と畏敬の念を持ち、動物を取り扱うこと
・国民が動物を愛護する気風を構築し、生命の尊重、友愛、平和に対する気持ちを育むこと
この理念や考えをもとに動物愛護を進め、とくに動物虐待を防ぐために機能する法律です。定められた項目を遵守するよう、都道府県では動物愛護団体との連携を行うケースが増えました。国も動物愛護団体の育成に乗り出しています。
各自治体には自治体が運営する動物保護センターが設置されました。諸事情で一緒に暮らせなくなった人からペットを引き取ったり、迷い犬や迷い猫を収容・保護したりと業務は多分野にわたります。保護した犬や猫の譲渡会も業務のひとつです。
さらに、環境省では「人と動物が幸せに暮らす社会の実現プロジェクト」も発足しました。殺処分ゼロを目指し、人と動物が幸せに共生できる社会を作ろうとしています。
しかし、どの業務もマンパワーが不足している状態です。行政だけでは対応しきれないのも事実です。そこで各自治体は動物愛護団体と連携し、保護活動や動物愛護の啓発を進めています。
お住まいの自治体にも、動物保護センター主催の譲渡会や動物愛護団体の活動があるかもしれません。もしも見かけることがあれば、保護された動物たちの幸せを願ってあげてくださいね。
世界の動物愛護はもっと進んでいる!
世界でも動物愛護は盛んです。日本より進んでいる国もあり、人間から動物への愛情、生命と尊厳を尊重したい気持ちに国境はないのだと実感させられます。
動物保護に関して、世界でもっとも厳しい法律を定めているのはスイスです。たとえば、尊厳が守られる対象には食料になる家畜や魚類も含まれています。残酷な方法で処理をしてはいけない、輸送時間の上限が定められているなど、じつに細かい規定です。
動物実験も非常に厳しい規制があります。あらゆる動物実験(人体実験含む)を禁止するべきだという声は根強く、何度も国民投票がおこなわれているほどです。
ほかにも詳細な規定が定められています。スイスの人々がいかに動物愛護に関心を持ち、幸せに暮らせることに関心を持っているかがよく分かりますね。
スイスのほかにはドイツやイギリスが有名です。どちらの国も動物愛護に関する法律を制定し、その数の多さや厳しさは日本をはるかに超えるのだそうですよ。とくにイギリスは世界最古の動物福祉協会があり、世界に先駆けて動物愛護に着手した国でもあります。
わたしたちにできる動物愛護
動物愛護活動をしたくても、実際に何をすればよいのか…と思う人もいるかもしれません。仕事や家庭が忙しく、思ったように活動しづらい可能性もあります。まずは身近でできることからはじめてみませんか?
動物愛護団体に寄付する
動物愛護団体の多くは、活動資金に恵まれているわけではありません。寄付があれば大きな助けになるでしょう。無理に大金を用意する必要はなく、できる範囲で気持ちを寄付すれば十分な力になります。
動物保護センターや動物愛護団体に支援物資を送る
保護されている動物たちが使える物資を送るのもよい方法です。エサや日用品、消耗品など、無理をせずに用意できるものがあれば送ってみましょう。事前に送り先に「何が必要ですか?」と確認してみると、そのときに必要なものが送れるのでおすすめです。
自分のペットを適切にお世話する
一緒に暮らしているペットを迷子にしない、不適切な環境に置かない、しつけをきちんとする…。「そんなこと当たり前でしょう」と思うかもしれませんが、これらも大切で、かつ、重要な動物愛護です。
清潔な環境で迷子にならずに暮らすだけで、動物保護センターや動物愛護団体に保護される可能性が減ります。しつけができれば社会で快適に暮らしやすくなるでしょう。
そんなあなたのペットを見て、これからペットを飼おうとしている人が「あれがよい飼い方だ、自分も見習おう」と考えるかもしれません。とても重要な動物愛護活動です。
動物愛護は動物と楽しく幸せに共生できる社会を作る
動物愛護は決して難しい考え方ではありません。活動も難しく考えず、できることからはじめましょう。
いまペットと一緒に暮らしている人は、これからも愛情を持ってお世話しましょう。飼っていなくても動物が好きな人は、触れあうときにたっぷりの愛情を注いであげてください。それも立派な動物愛護活動です。