
動物園で働くというのは、動物好きな人にとっては魅力的に感じる仕事の一つでしょう。
しかし、シンプルに「動物が好き」なだけでは務まりません。エサの準備や掃除など地道な作業を行い、時には大型動物を扱う体力が求められ、病気や怪我への対応など緊急時の判断力も必要です。
今回は、動物園の数ある働き方の中から「飼育員の仕事」について解説していきます。
飼育員の仕事内容は多岐にわたり、表面からは見えにくい努力が欠かせません。
来園者にとっては楽しいレジャー施設ですが、裏側では命を扱う現場として高い専門性と責任感が求められているのです。
飼育員の1日は早朝から始まります。
多くの動物園では、開園前の時間にエサの準備や清掃を済ませる必要があるため、勤務は朝6~8時頃に始まるケースが一般的です。
担当は、ゾウやキリンなどの大型動物、鳥類や爬虫類、小動物といったように飼育員ごとに分かれており、担当動物の様子を確認し、体調や行動に異変がないかを観察します。
その日のスケジュールには給餌や健康チェックだけでなく、展示のための環境整備や行動を促す工夫なども含まれます。
夕方にはエサの片付けや再度の健康チェックを行い、閉園後にも残業が発生することは少なくありません。
飼育員の仕事で最も多くの時間を占めるのが「エサの準備」と「掃除」です。
ライオンやトラには肉を、草食動物には牧草や野菜を、鳥類には果物や穀物と、それぞれの動物の生態に合わせた食事を細かく調整し、栄養バランスは獣医師と相談しながら決定されるため、ただ与えるだけではなく科学的な知識も必要です。
また、飼育舎の掃除は衛生管理の基本であり、感染症を防ぐために徹底した作業を行います。
さらに日常的な健康チェックも重要で、食欲や排泄の様子、毛並み、歩行の状態などを細かく記録し、異常があればすぐに獣医師に報告します。
動物園は種の保存を目的とした繁殖活動も担っていて、絶滅危惧種を守るために人工授精や繁殖計画が国際的に進められており、日本の動物園も積極的に参加しています。
赤ちゃんが誕生した際には、授乳や体温管理など細やかなケアが必要で、母親が育児を行えない場合は、飼育員が代わりに哺乳や排泄の補助を行うケースもあります。
動物の赤ちゃんの公開は来園者に大きな感動を与えますが、その裏側には夜間も続くハードな世話があり、担当飼育員の献身が支えになっているのです。
動物園は来園者への教育施設としての役割もあり、その一環として行われるのがショーやガイドで、動物の能力を楽しみながら学べる工夫を凝らす必要があります。
飼育員によるガイドツアーやイベントは、動物の生態や保護活動について理解を深める機会になります。
裏方の仕事だけでなく、来園者と直接関わる「伝える役割」も重要であり、その発信力が動物園の評価を大きく左右するのです。
動物園は、前述したように教育、研究、種の保存といった社会的役割を担う施設なので、飼育員として働くうえでも専門的な知識と現場での実務能力が求められます。
さらに日々の業務を支える体力や人と関わる力も欠かせません。
動物園で働くために必須の国家資格は存在しませんが、関連する資格を持つことで採用時の評価が高まり、実際の業務でも役立ちます。
代表的なものは「愛玩動物飼養管理士」で、家庭動物の飼養、管理について、基礎知識として有効です。
また「愛玩動物看護師」は、動物の健康管理や医療補助に直結する資格で、獣医師のサポート役としても重宝されます。
さらに動物取扱責任者として認められる資格や経験があれば、動物の管理に関する法令面でも強みになり、応募者が多数いる動物園の採用試験では評価されやすく、就職後のキャリアアップにもつながりやすいでしょう。
飼育員を目指す多くの人は、高校卒業後に専門学校や大学で動物関連のことを学びます。
専門学校では「愛玩動物看護科」などが用意され、実習を通じて実践的なスキルを習得できるのが特徴です。
大学では獣医学や生物学など専門的なものが学べ、教育機関や研究機関とも連携している動物園も多いため、大学で得た知識や研究実績は大きな強みになります。
動物園の仕事は動物と向き合うだけでなく、人との関わりも多いのが実情です。
前述した、来園者に動物の生態や保全活動をわかりやすく伝えるガイドの役割、チームで動物を管理する協力体制、獣医師や研究員との専門的なやり取りなど、幅広いコミュニケーションが欠かせません。
また、体力面も大きな要素で、大型動物のエサの運搬や広い飼育舎の清掃などは肉体労働の連続であり、炎天下や冬場の屋外作業も日常です。
さらに突発的なトラブルへの対応や夜間の出産、看病など、勤務時間外に呼ばれる場合もあるため、体力に自信があることと、粘り強く続けられる精神力は資格以上に重要といえるでしょう。
最大の魅力は、やはり動物と毎日過ごせる点です。
ゾウやライオンといった迫力ある大型動物から、レッサーパンダやカワウソのような愛らしい小動物まで、一般の人では体験できない距離感で接することができます。
特に長く担当している動物とは信頼関係が築かれ、名前を呼ぶと反応する、手からエサを受け取るといった瞬間に特別な喜びを感じられるでしょう。
さらに繁殖や赤ちゃんの誕生に立ち会えたときの感動は大きく、多くの飼育員にとって仕事を続けるモチベーションになっています。
飼育員の仕事は肉体労働の連続で、数十キロもあるエサを運んだり、広大な飼育舎を毎日掃除したりと、体力がなければ続けられません。
さらに動物は毎日の世話が必要なため、土日祝日やゴールデンウィーク、夏休みといった繁忙期には休みを取るのが難しく、家族や友人と予定を合わせづらいという悩みを持つ飼育員も少なくありません。
また、天候に関係なく屋外作業が発生するため、猛暑や厳冬の中での業務は体に大きな負担となる場合があります。
動物園で働く以上、「命」と向き合う責任からは逃れられません。
病気や怪我をした動物の看護や治療に関わる場面も多く、命の危機に直面し、時には救えないケースもあるため、その悲しみは大きな精神的負担となることがあります。
さらに、大型肉食動物など危険を伴う動物の管理には緊張感が常につきまとい、少しの不注意が重大事故につながる可能性もあるので、メンタル面のタフさも欠かせません。
動物園で働く上で、大きな支えになるのが来園者の反応です。解説を熱心に聞いてくれる子どもや、動物の健康を気遣う声をかけてくれる来園者から「ありがとう」と言われたとき、努力が報われたと感じる飼育員は多くいます。
自分の仕事が誰かの学びや感動につながっている実感は、何事にも代えがたい喜びがあります。
また、動物の健康を守るだけでなく、繁殖や教育活動を通じて社会全体に貢献している重要な役割を担っていることにも、大きな価値を感じられるかもしれません。
動物園での飼育員としての仕事は、動物が好きな人にとって憧れの職業ではありますが、想像以上に厳しく、体力、精神力、専門性のすべてが求められます。しかし、動物と築く信頼関係や来園者の「ありがとう」の声が大きなやりがいとなるでしょう。
もし目指すなら、表面の華やかさだけでなく、裏側の現実も理解したうえで挑戦してみて下さい!