動物が好きで「仕事として関わってみたい」と考えたとき、どのような職種があり、どんな役割や責任があるのかは意外と見えにくいものです。一口に動物の仕事といっても、求められる知識や働き方は大きく異なります。

今回は、代表的な動物関連の仕事や資格の考え方について解説します。ぜひ自分に合った道を考えるヒントにしてみてください。

動物に関わる主な仕事の種類

トリマー

トリマーは、犬猫の被毛を整える専門職です。カットだけでなくシャンプーや爪切り、耳掃除、肛門腺ケアといった衛生管理全般を担います。
勤務先はトリミングサロンやペットショップ併設、動物病院併設、ホテル併設サロンがメインで、職場によって求められる役割が変わるのが特徴です。
サロンではデザイン性とスピード、リピート獲得の接客力が重要になり、病院併設では高齢や持病のあるペットへの負担軽減や獣医師との連携が重視されます。
技術面では、犬種ごとの基礎知識や毛質、皮膚状態の見極め、保定（安全に支える技術）が必要です。
また、トリミング中に皮膚炎、外耳炎、しこり、ノミダニなどの異常に気づき、受診を勧める早期発見の役割も果たします。

ペットシッター

ペットシッターは、飼い主が不在の間に訪問して世話を代行する仕事です。
散歩や食事、トイレ清掃、遊び、獣医師や飼い主の指示に基づく範囲での投薬補助、簡単な健康チェックを行い、動物のストレスを最小限にしながら日常を維持します。
環境変化が少ない点がメリットですが、鍵の管理や防犯、事故防止、緊急時の連絡体制の責任などは重くなります。
仕事の質を左右するのは、飼い主との事前打ち合わせと報告です。
食事量や排泄、散歩の様子、体調の変化を記録し、写真付きで共有するというような配慮によって信頼が積み上がり、リピートにつなげられます。
また、犬猫だけでなく、うさぎ、鳥、爬虫類、魚など多様な依頼があり、種ごとの飼育知識が差別化要因になります。

動物病院スタッフ(愛玩動物看護師)

動物病院で中心的に活躍するのが愛玩動物看護師です。
国家資格化により、一定の知識、技能を備えた専門職として位置づけられ、獣医師の診療を支える役割がより明確になりました。
業務は受付や会計だけでなく、診察補助、入院動物のケア、検査補助、手術準備、器具の滅菌、飼い主への説明補助、獣医師の指示内容に基づく投薬説明の補助など多岐にわたります。
現場では、動物の呼吸や粘膜色、食欲、痛みといった、わずかな異変を見逃さない観察力と、記録の正確さが安全に直結します。
また、飼い主は不安や罪悪感を抱えて来院することも多く、医療知識だけでなく心理的ケアやコミュニケーション能力も重要です。

ドッグトレーナー

ドッグトレーナーは、犬のしつけや問題行動の改善、飼い主への指導を通じて、人と犬が安全に暮らせる関係を作る仕事です。
「おすわり」などの芸だけでなく、吠えや噛み、分離不安、引っ張り、トイレ、社会化不足といった生活課題に向き合うため、犬の学習理論や行動学、ストレスサインの理解が欠かせません。
勤務先はしつけ教室、ペットショップ、訓練所、出張型、ホテルや幼稚園の施設併設など多様で、重要なのは犬を変えるだけでなく、飼い主の行動を変える指導力です。
家庭内のルールや散歩の仕方、褒め方、タイミング、環境設定を具体的に提案し、継続できる形に落とし込むのも役割です。
また、安全管理も大前提で、咬傷事故の予防やリードワーク、他犬との距離管理、子どもとの接触指導など、リスクを見立てる力が求められます。

ブリーダー

ブリーダーは、主に犬猫の繁殖や育成を行い、適切な家庭へつなぐ仕事です。
華やかに見えがちですが、繁殖計画や遺伝性疾患の理解、妊娠出産の管理、子犬子猫の社会化、衛生管理、ワクチンや健康チェック、譲渡後フォローまで、命と福祉に直結する責任の重い職種です。
近年は動物福祉の観点が強まり、繁殖回数や飼養環境、販売方法、説明責任が厳しく見られます。
企業ブリーダーは設備や分業体制が整う一方、個人は自身の理念を反映しやすい反面、経営、集客、法令対応まで一人で担う場面が増えます。
また、売ることが目的化するとトラブルが起きやすいため、「譲渡先の生活に合うか」「飼育継続が可能か」を見極める視点も欠かせません。

動物園の飼育員

動物園の飼育員は、給餌や清掃、健康観察、環境整備といった動物の飼育管理を軸に、展示の質を高める仕事です。
日々の業務は地道で、糞尿処理や重い飼料の運搬、早朝作業など体力が求められ、動物の行動変化から体調やストレスを読み取り、環境を工夫して、より自然に近い行動を促すのが専門性の見せどころです。
また、来園者への解説やイベント、ガイド、学校向け学習支援など、教育普及の役割も大きく、人に伝える力が評価されます。
動物園は種の保存や研究、地域の生物多様性保全に関わることもあり、飼育するだけの仕事にとどまりません。
採用は狭き門になりやすいため、実習経験やボランティアなどを通じて、現場で通用する材料を積み上げることが重要です。

アニマルカフェ、ふれあい施設

アニマルカフェやふれあい施設は、動物との体験価値を提供するサービス業です。
主な業務は接客や利用ルールの説明、動物の体調確認、清掃や消毒、給餌管理、SNS発信、物販などで、店舗運営の比重が大きいのが特徴です。
特に重要なのが安全管理で、咬傷や引っかき事故の予防、アレルギーや感染症への配慮、子どもへの注意喚起で、リスクを先回りして潰す力が求められます。
また、動物福祉の観点から、休息時間の確保、触れ合いの制限、逃げ場の設置、過度な抱っこや追いかけの禁止など、ストレス対策を運営に組み込む必要があります。
「動物がいるカフェ」ではなく、「動物の健康と安全を守りながら体験を設計する施設」というのが仕事の本質です。

資格は必要？ 国家資格と民間資格の違い

動物に関わる仕事は、資格が必須のものと、資格がなくても始められるものがあります。
ただし「資格が不要＝簡単」というわけではありません。
動物の扱いは事故やトラブルのリスクがあり、知識不足は動物の健康被害や顧客トラブルに直結します。
そのため、未経験で入る場合ほど、学習や実習を通じて安全にできる範囲を広げる姿勢が必要です。

【国家資格】愛玩動物看護師に必要な取得ルート

愛玩動物看護師は、国が指定する養成課程で学び、国家試験に合格して取得します。
医療は知識更新が早いため、資格取得はあくまでもスタートラインです。
現場での継続学習が不可欠で、感染症や薬剤、飼育環境の変化に合わせて学び続ける人ほど信頼を得られます。

【民間資格】トリマー、訓練士、トレーナーで評価される資格

トリマーや訓練士、トレーナーは民間資格が中心で、団体ごとに等級や試験内容が異なります。
トリマーならカット技術だけでなく保定や衛生、皮膚被毛の基礎が学べるかが重要で、トレーナーなら行動学に基づく指導と、安全管理、飼い主指導の実践が含まれるかがポイントになります。

資格なしでも就職しやすい職種と注意点

資格なしでも比較的就職しやすいのは、ペットショップスタッフやアニマルカフェ、ふれあい施設スタッフ、ペットホテル補助、シッターです。
これらは接客や清掃、基本的なケアを中心にスタートできることが多く、未経験可の求人も見つかります。
ただし、独立開業や事業運営には第一種動物取扱業の登録が必須です。

動物の仕事は「好き」だけで選ばず、役割と責任で考えよう

動物に関わる仕事を選ぶときは、「どの動物に関わりたいか」だけでなく、「どのような役割が合っているか」を軸にするのがおすすめです。
まずは気になる職種を2～3個に絞り、求人要件を確認し、必要な学習と実習やボランティア、アルバイトなどの現場経験をしてみて下さい。
動物への愛情を持ち続けられる仕事を選びましょう！